準委任契約は、法律行為ではない事務の処理を相手に委託する契約です。民法656条が、委任(法律行為の委託)に関する規定を準用すると定めています。請負契約(民法632条)との最大の違いは、「仕事の完成」を約束するかどうか。準委任は事務を誠実に処理すること自体が義務で、結果の完成は約束しません。

営業代行の契約を結ぶとき、この2つのどちらの性質を持つ契約なのかが曖昧なまま進むケースは少なくありません。違いは3つの場面で表に出ます。責任の所在、報酬の発生条件、途中で止めたときの精算。契約書を作る段階で整理しておく価値があります。

準委任契約とは——民法656条が委任の規定を準用する

民法の「委任」は、法律行為(契約の締結など)を相手に任せる契約を指します。営業代行で行う架電、ヒアリング、商談日程の調整、資料送付といった業務は法律行為そのものではないため、「委任」ではなく「準委任」になります。656条は、こうした事務の委託に委任の規定をそのまま当てはめる、と定めた条文です。短い条文です。中身はすべて委任の側にあります。

受任者(代行会社)が負う中心的な義務は、善良な管理者の注意をもって事務を処理すること。いわゆる善管注意義務です。定められた手順と量の架電を行い、経過を報告し、指示に従って業務を進めていれば、結果としてアポが取れなくても契約違反にはなりません。逆は成り立ちます。約束した架電量を大幅に下回る、報告を怠る、指示に反した対応をするといった場合は、成果の有無に関係なく義務違反を問われます。

請負契約(民法632条)との違いは「仕事の完成義務」の有無

請負は、請負人が仕事を完成させることを約束し、注文者がその結果に対して報酬を支払う契約です(民法632条)。建物の建築やシステム開発が典型例。完成した成果物に欠陥があれば、注文者は修補や代金減額、損害賠償、解除といった契約不適合責任を追及できます。

過程は問わず、結果を問う。それが請負です。両者を同じ軸で並べると次のようになります。

比較項目請負契約(民法632条)準委任契約(民法656条)
契約の目的仕事の完成事務処理の遂行
受注側の義務完成させる義務善管注意義務を尽くして処理する義務
報酬の発生条件原則として仕事の完成事務処理の遂行(合意により成果を条件にすることも可能)
責任の中心契約不適合責任(成果物の欠陥)善管注意義務違反の有無(処理の過程)
中途終了時の報酬原則不発生。可分な部分で注文者が利益を受けるときは、その割合に応じて請求できる場合がある既にした履行の割合に応じて請求できる(民法648条3項)
業務の進め方請負人の裁量が大きい委任者の指示に従い、経過を報告する

実務で混乱を招くのは、報酬の欄です。「成果に応じて払う=請負」と短絡すると、後述のとおり中途解約の精算で揉めます。報酬の決め方と契約の性質は別問題。切り分けて考えます。

営業代行契約は準委任が多い——成果報酬型でも請負とは限らない

答えは準委任です。営業代行の業務内容は、架電・商談設定・フォローといった役務の提供が中心で、「アポイント○件」という数字を目標に置いていても、顧客がどう反応するかは代行会社がコントロールできない要素を含みます。そのため法的性質は準委任に整理されるのが一般的です。

成果報酬型(有効商談1件あたり○円)の契約であっても、これは「報酬の算定方法」を成果に連動させているだけで、契約の性質そのものを請負に変えるわけではありません。準委任には「事務処理の労務そのものに報酬を払う型」と「事務処理の結果として得られる成果に対して報酬を払う型(成果完成型の準委任)」の2つがあり、成果報酬型の営業代行は後者に近い設計です。成果が出なければ報酬は発生しません。ただ、成果が出ないこと自体を契約違反として損害賠償を求められる関係にはなりません。

契約書のタイトルが「業務委託契約書」でも、条文の内容によって請負にも準委任にもなります。手がかりは3点。

  • 報酬の対価が「完成した仕事」か「役務の提供」か
  • 業務の進め方について、委託側に指示・報告を求める条項があるか(あれば準委任寄り)
  • 成果が出なかった場合の責任条項が、修補・やり直しを求める内容か(あれば請負寄り)

中途解約時の報酬は民法648条3項の「割合報酬」が基準

準委任契約を途中で終了させた場合、受任者は「既にした履行の割合に応じて」報酬を請求できます(民法648条3項)。委任者に責任のない事由で履行が不可能になったときや、契約が履行の途中で終了したときに適用される規定です。途中で止めても、やった分は払う。それが原則です。

営業代行に当てはめると、次のように整理できます。

固定報酬型(月額)の場合 月の途中で解約すれば、稼働した日数・時間に応じた日割り・時間割りの報酬が発生する、というのが648条3項の考え方です。日割りの計算方法を書く。それだけで精算の揉め事は減ります。

成果報酬型の場合 成果(有効商談)が解約前に成立していれば請求対象。解約時点で進行中だった案件(架電済みだが日程未確定など)をどう扱うかは、648条3項だけでは決まりません。「解約通知日までに日程が確定した商談は請求対象とする」のように、線引きを契約書で明記します。

請負として組んでいた場合 仕事の完成が報酬の条件なので、原則は未完成なら報酬なし。完成した部分が可分で、注文者がその部分から利益を受けるときは、割合に応じた報酬を請求できる場合があります。ただ、営業代行における「可分な部分」とは何か、注文者が受けた「利益」とは何かの認定は争いになりやすく、この点が、営業代行を準委任で組むべき実務上の理由になります。

委任契約は、各当事者がいつでも解除できるのが原則です。相手方に不利な時期の解除は、やむを得ない事由がなければ損害賠償の問題になり得ます。最低契約期間や解約予告期間を設ける契約は、この原則を当事者の合意で修正していることになるため、条項の文言を確認しておきます。

契約書で確認する条項

契約書を受け取ったら、次の条項を「契約類型と整合しているか」の視点で読みます。確認するのは8か所。

  • 業務内容の記載: 「アポイントの獲得」のような結果表現だけか、「リスト作成・架電・日程調整・報告」といった役務の記載があるか
  • 報酬条項: 算定根拠(完成対価か役務対価か)、成果報酬なら「成果」の定義(アポか、有効商談か、受注か)
  • 中途解約の精算: 固定報酬の日割り方法、成果報酬の進行中案件の扱い
  • 解約予告期間と最低契約期間: 有無と、途中解約時の違約金の定め
  • 業務遂行の裁量と報告義務: 指揮命令関係の有無、報告の頻度と内容
  • 業務懈怠への対応: 約束した架電量を下回った場合の是正手順、解除要件
  • 再委託の可否: 再委託先の範囲と、再委託先の行為に対する元請けの責任
  • 契約類型の明示: 「本契約は準委任契約の性質を有する」と明記されているか

契約類型を明示する一文があるだけで、解釈の争いの多くを防げます。逆のケースには注意が要ります。成果報酬型なのに「本契約は請負契約とする」と書かれている場合、中途解約と責任の条項が営業代行の実態に合っていない可能性が高く、その2か所を読み直す必要があります。

よくある失敗パターン

成果報酬だから請負契約だと思い込む 最も多いパターンです。「成果報酬型=請負」と判断し、中途解約時の報酬精算でトラブルになります。解約時点で進行中だった案件の扱いを決めておらず、代行会社は「架電した分の対価」を、発注側は「成果が出ていないので支払い義務なし」を主張して対立します。

準委任だから安心して、業務懈怠の条項を用意しない 結果を約束しない契約だからこそ、過程の品質を担保する条項が要ります。架電量の下限、報告の頻度、指示に従わなかった場合の是正手順。これらを書いていないと、稼働が低調でも解除しにくくなります。

再委託の連鎖で責任の所在が消える 代行会社がさらに別の事業者へ業務の一部を再委託している場合、契約類型の整理は元請けとの契約だけで済みません。元請けとの契約が準委任でも、再委託先との間で異なる性質の契約が結ばれていることがあり、トラブル発生時にどの契約に基づき誰が責任を負うのかが不明確になります。再委託の可否と範囲を契約書に明記し、再委託先の行為について元請けが責任を負う旨を入れておくのが現実的な対処です。

本稿は一般的な整理であり、個別契約の性質判断は弁護士への相談を推奨します。

よくある質問

Q. 成果報酬型は必ず請負契約になりますか A. なりません。報酬の決め方だけで契約の性質は決まらず、業務内容全体から判断されます。成果報酬型の営業代行は、成果完成型の準委任として整理されるのが一般的です。

Q. 準委任契約でも成果を条件にできますか A. できます。事務処理の結果として得られる成果に対して報酬を払う、成果完成型の準委任という類型があります。何を「成果」とするかを契約書に明記することが前提です。

Q. 契約書に「準委任」と書いてあれば、内容は問われませんか A. 問われます。名称や類型の明示は解釈の手がかりになりますが、条項の実質が請負(完成義務、修補責任)になっていれば、そちらで判断される余地があります。名称と条項の一致。これが要点です。

Q. 契約類型で迷った場合どうすればよいですか A. 業務内容・報酬・解約・責任の各条項を整理したうえで、弁護士に見解を確認するのが現実的です。営業代行会社側にも、過去の契約で使っているひな形の類型を聞いておくと、擦り合わせが早く進みます。